疲れない椅子。親子3代で座る椅子。世界一高価な椅子。

生活学

2023年、厚生労働省が日本人の平均寿命を、男性81歳女性87歳と発表しました。

私達は今までの人生でどれだけの時間を、椅子の上で過ごしたでしょうか。

そしてこれからの時間を椅子の上でどれ位過ごすでしょうか

学校、職場、自宅、あらゆる生活の場で私達は椅子を使用しています。

貴方はどの様な椅子に出逢え、そしてどの様な椅子と出逢えるでしょうか。

新しく住宅やマンションを購入、あるいは新築される方、まず椅子の予算を考えましょう。

ローンを組む時、自動車1台分の費用を削ってでも最高の椅子を1脚リビングに置きましょう。

家族の誰もが自由に座れる椅子を。

これは一級建築士の立場からのアドバイスです。

 

欲しくなる椅子HIROSHIMA

2023年、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の主会場で使用された椅子HIROSHIMAについて。

2023年広島G7サミットで使用された椅子(ヒロシマ)に座る各国の首相達のイメージ。

 

広島G7で使用された椅子   

先進7カ国首脳会議(G7サミット)の主会場となったグランドプリンスホテル広島でマルニ木工(広島市佐伯区)の円形テーブルと椅子が使われ話題となりました。

首脳達が座った椅子は、オーク材製の「HIROSHIMA アームチェア」です。

サミットでは座面を革張りにした輸出用を納入したそうです。

 

世界のApple社が認めた椅子 

アップルパークで使用されている椅子(HIROSHIMA)。

                         Appleパーク食堂(写真引用)

HIROSHIMA アームチェア」は世界中で販売され、米アップル本社で数千脚が導入されて話題となりました。

今では世界中に輸出され、apple社の「アップル・パーク」にも数千脚設置されています。

世界の定番になったと言っても過言では無い新しい日本の名作品です。

 

広島G7で使用された椅子(HIROSHIMA)。

( 写真引用 )

   サイズ   横56cm     

 奥行き   53cm

              高さ    76.5cm   

  座面高さ  42.5cm

 素材   オーク材     

    傷防止フェルトが付属しています。

 

名作HIROSHIMAのデザインと性能 

高い技術が求められるHIROSHIMAは、デザイナーの深澤氏が後に「マルニ木工だから完成した一生涯使用できる名作です」、と言っています。

すばらしい座り心地は、座面が板座とは思えないほどのフィット感があります。

少し体制を崩しても違和感を感じない滑らかな背あたり。

見た目は限りなくシンプルなデザイン。

凛とした美しさを感じさせます。

日本の住宅にも合うインテリア性を兼ね備えています。

 

職人泣かせの曲線美 

HIROSHIMAは平面の無いデザインです。

繊細なカーブが多い為、手作業で精度の高い成形を求められる、職人泣かせのデザインでした。

そのデザインは職人に作るのが嫌だった、と言わせるほど困難な作業だった様です。

当初は月に40台程しか製造できなかったそうです。

非常に困難な時間のかかるデザインを、コンピュータのプログラムと職人技により徐々に作業時間を短縮することに成功したそうです。

作業効率が向上するにつれ、職人たちは手でなでるだけで設計図通りか分かるようになったそうです。

簡素で、職人のこだわりがあるHIROSHIMAは、世界中で選ばれるています。

 

HIROSHIMAのデザイナー 

ヒロシマをデザインした深澤直人のイラスト。

深澤直人( NAOTO FUKASAWA ) / プロダクトデザイナー。

1956年山梨県生まれ。

山梨県立甲府工業高等学校卒業。

多摩美術大学美術学部プロダクトデザイン科卒業。

セイコーエプソン社先行開発デザイン担当。

渡米し、シリコンバレー産業のデザインに従事。

帰国後、IDEO東京オフィースを立ち上げ支店長として活躍。

NAOTO FUKASAWA DESIGN設立。

渡米中、生まれて間もない娘を背負いながらキッチンで仕事をし、娘のためにベットや布団を手作りするなど、子煩悩な一面も持ち合わせるデザイナーでもあります

 

HIROSHIMAのデザインの潮流

名作HIROSHIMAがどの様にデザインされたのかをたどっていきます。

 

中国明時代の椅子    

中国、明時代の椅子。この椅子がデザインの源流となっている。( 写真引用 )

中国明時代の椅子です。簡素美を体現し、当時の官吏や官僚が実用的に使っていたといわれています。

このデザインはヨーロッパにも影響を与えました。

デンマークのデザイナーであるハンス ・ウェグナーは、明時代の圏椅(チュェン・イ)という椅子を本で目にし、感化されたと言われています。

圏椅は、官吏が使用していたので、英語では、circle back chairまたはhorse-shoe armchairと呼ばれます。

 

チャイニーズチェアー

デンマークのデザイナー、ハンス・ウエグナーがデザインしたチャイニーズチェアー。

( 写真引用 )

明の圏椅(チュェン・イ)という椅子に感化されてハンス ・ ウェグナーがデザインしたと言われていす。

センターボードは腰を適切にサポートする様に十分な高さで曲げて成形されています。

こちらの椅子は PPモブラーのプレミアムコレクションになるため、注文後、約 1年~それ以上納入に時間がかかると言われています。

 

Yチェアー

 

ハンス・ウエグナーがデザインしたYチェアー。

( 写真引用 )

チャイニーズチェアを、よりシンプルなデザインとすることで、1950年、ウェグナーの求めた形にたどり着いたのがこのYチェアーです。

背面の支柱がアルファベット文字のYのような形状であることから Yチェアと呼ばれ、モダンデザインの不朽の名作となりました。

Yチェアの美しい形は、 明の美意識にもとずいています。

一時的な時代の潮流ではなく時代や国を越えて影響を与えているのが、明のスタイルです。

 

大統領選を制した椅子

ケネディーとニクソンの大統領選挙テレビ討論会で使用されたザ・チェアーについて説明していきます。

 

ザ・チェアーについて

ニクソンとテレビ演説で腰の悪いケネディーが使用したザ・チェアー。( 写真引用 )
       

ウェグナーは“ザ・チェア”を1949年に発表しました。

この素朴な椅子は、発表当初みにくいアヒルの子と揶揄され悪評を受けましたが、このザ・チェアが世界に知られる事になったきっかけは、1960年アメリカ大統領選でのテレビ討論会でジョン・F・ケネディがこのザ・チェアーを使用した事でした。

腰痛の持病を持っていたケネディは、腰に負担が少なく、それでいて自分が堂々として美しく見える椅子を探します。そして、このザ・チェアを探しあてたといわれています。

1960年、大統領選でのリチャード・ニクソン副大統領と、ジョン・F・ケネディとのテレビ討論会では、圧倒的にニクソンが有利とされながらもケネディが勝利したと言われています。

その背景として、ニクソン副大統領は病院から戻ったばかりで、テレビ出演用のメイクを拒んだことから無精髭が目立った事。

そして当時のアメリカでは白黒テレビが主流であった為、淡い色の背広を着ていたニクソンよりも討論直前に輪郭がはっきりと見える濃紺のネイビーの背広に着替えたケネディーの方が好印象に映った事も勝因の一つと評されています。

どちらにしても7000万人の視聴者は言葉よりも見た目に注意を惹かれたわけで、ラジオではニクソン、テレビではケネディーが有利に働いたことを示すケネディー陣営のメディア戦略の事例として現在でも語り継がれています。

 

ニクソンとケネディーのテレビ演説風景イメージ。

(テレビ討論会の風景)

ニクソンとテレビ演説でザ・千ェアーに座るケネディーのイメージ。

(ザ・チェアーに座るケネディー)

クリック君・選挙画像画

ザ・チェアーの特徴について

美しさと存在感があり、座った人をより際立たせるために、人が座ると自身の存在を消してしまう不思議なデザインでもあります。

もともとウェグナーはダイニングで使用することを考えていませんでした。

ソファの前などに置いて腰かけるための椅子としてデザインされたと言われています。

この椅子に腰をかけ、アームの部分に手をのせたときに触れる、木材の触り心地の素晴らしさも大きな特徴の一つです。

上質な木材を用いることで、ずっと撫でていたくなるような質感や、柔らかなアームのラインもこの椅子の特徴です。

 

世界で一番高価な椅子

世界一高額な椅子。

この椅子は、アイリーン・グレイがデザインしたDragons armchair「 ドラゴンチェアー 」で、評価格2850万ドル(約30億3000万円)です。

2009年パリのクリスティでのオークションで21,905,000ユーロ(約28億円)で落札されました。

アイルランドの女性建築家、アイリーン・グレイー(1878-1976)は、建築界の巨匠ル・コルビュジェの嫉妬をかい、生前脚光を浴びることがありませんでした。

グレイはル・コルビュジェが提唱した「近代建築の五原則」に異論を唱え、自身のモダニズムを完成させた建築家でありました。

また、ル・コルビュジェの「住宅は住むための機械である」という考えに対して、住まい手の個性に寄り添うべきであると異論を唱えていました。

そんなグレイの思想は、周囲からの好意的な反応が多かったこともあり、よりコルビュジェの怒りをかったとも言われています。

そんなグレイの生涯が映画化され、再評価されたこともあり、彼女がデザインしたこの椅子は100年近くの時間を経て評価され、高額な評価格が付いたのだと思われます。

イヴ・サンローランとピエール・ベルジェの家にあった作品であったことも評価された要因だと思われます。

 

まとめ

 

人生100年時代と言われていますが、私達はこの先、人生の中でどれだけの時間、椅子に座るのでしょうか。

そして、これからどれ位の時間を椅子のお世話になるでしょか。

貴方は、今までにどの様な椅子に出逢えたでしょうか。

初めての出会いは学習机に付属していた椅子。

そして一人暮らしを始めた時に購入した椅子。

結婚相手と一緒に探した椅子。

様々な人生の節目に存在したそれらの椅子を、あなたはどれだけ思い出すことができるでしょうか。

所有した椅子の中で気に入った椅子は何脚あったでしょうか。

貴方の子供が椅子を必要とした時、貴方はどの様な椅子を子供に薦めるでしょうか。

自身が老いた時、どの様な椅子に座りたいでしょうか。

畳の生活が長かった日本人には、椅子に対する思いが少ないように思われます。

足腰が弱くなった時、座敷よりもベッドと椅子の生活を余儀なくされます。

自分の祖父母が座っていた椅子を思い出すことが出来るでしょうか。

祖父母、両親、自分そして子供に受け継がせる椅子を北欧の人々は使用しています

日本とは比較にならない程高価な椅子を、何度もメンテナンスを繰り返して代々使用します。

SDG`sをこれからの企業は避けて通る事は出来ません。

再生可能な椅子、長く使用しても厭きることのないロングランデザインの椅子がこれから必要とされます。

私達消費者も、今一度椅子に対する考え方を改める時代が来たように思われます。

最後までお付き合い頂き有難うございました。

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